2023年4月2日、ヴァイオリニストの成田達輝は「ゴシック・アンド・ロリータ」と題した独奏ヴァイオリン演奏会を、作曲家の梅本佑利、山根明季子と東京にて開催する。
本公演では、J.S.バッハの独奏ヴァイオリン作品と、その題材にした梅本・山根による新作を初演する。

 

 

成田さんは、4月2日に、「ゴシック・アンド・ロリータ」という不思議な公演を開催されますが、これは、いったいどのようなコンサートなのでしょうか?

成田: 端的にいうと、日本のストリートファッションとヨーロッパのバロック音楽を融合させようという試みです。これは私が取り組んできた演奏会の中でもっとも知的で、クリエイティブな試みです。

バロック音楽を代表するヨハン・セバスチャン・バッハの音楽をストリート的に再解釈するという意味合いを楽曲そのものに落とし込んでいます。簡単に言うと「あのバッハが渋谷と表参道を散歩している」みたいな感じ。笑

 

 

 

バッハの無伴奏ヴァイオリン作品とは、成田さんにとってどのようなものでしょうか?

成田: バッハが1720年代に完成して既に300年が経っていますが、今もなお熱心なヴァイオリン奏者は決して避けて通れないヴァイオリン音楽の金字塔ですね。ヴァイオリン1本でこの世のすべてを表すことに成功した、最初のヴァイオリン作品ではないでしょうか。

 

 

バッハの無伴奏作品を演奏するにあたって、難しいと感じる点、面白いと感じる点をそれぞれ教えてください。

成田: 様式美の理解と再現ですね。これはすべての音楽演奏に通ずると思うのですが、よりそれらしく演奏することがいちばん大切で、同時にいちばん難しいです。そしてやはりそれを研究するのが面白いです。

 

 

 

今回の梅本作品において、「死」や「廃墟」、「風化」(忘れ去られたもの)は大きなテーマだそうですが、これについて、成田さんはどのように解釈していますか?

成田: 例えば、「廃墟・秋葉原のアリス」(梅本佑利 ・作曲)という作品で彼の描いた「死」とは、彼が幼少期から過ごした街である秋葉原の荒廃のことだと理解しました。私自身、両親の転勤に合わせて暮らしてきたので、自分の土地への愛着というものに共感が出来ず、悩みましたが、チャイコフスキーの書いた「懐かしい土地の思い出」やドヴォルザークの「家路」のテーマなど時代を超えたテーマであると思います。 私は作曲家ではありませんしする気もないからだと思いますが、作曲家の「死」に対しては特に何も思いませんし何の感情もありません。なぜなら演奏家にとって作品は作曲家の生き写しだからです。

 

 

 

山根さんの作品の面白さ、難しさはなんですか?

成田: 山根さんの音楽って、弾くと懐かしい感じがするっていうか、包容力があって心が落ち着くんですよね、物事の内側から世界を見ている感じで、小宇宙を持っている。

山根さんの、今回書いていただいた音楽は、曲の終わり方がどれもとてもわかりやすく、山根さんご本人も「洋服の生地を裁断して、額縁に入れて」曲の終わりをつくる感覚だったそうです。

山根さんの作品に対峙すると、まさに演奏家に必要な、少なくとも私が30代で目標にしている「自己表現では無く、作品そのものを体現すること」を思い起こさせるというか、弾いていると自分が徐々に作品の中に溶けていく感覚があるんです。
私の考える、山根さんの作品の西洋音楽(クラシック音楽の文脈)における特異性は、山根さんご本人が仰っている「京都芸大の、ヨーロッパ現代音楽の語法を完全に習得した上ですべて捨てた」という、仏教の守破離にも似た諦念が、おそらく日本的音楽観などという概念をも飛び越えて山根さんの愛が作品に溢れているというところがあり、その音楽のレトリックですら非常に深遠で、高い芸術性があります。ちょうどブルックナーが「あなたの第8交響曲の手稿はどこにありますか」と訊かれた際(テーブルのほうを指して)「あそこら辺にある」と答えたのに似ています。なぜこのような音楽を書けたのか本人にも分からないのは非常に共通していると思います。

 

 

成田さんは普段から、現代音楽の演奏に積極的ですが、それには何か理由がありますか?

成田: 私の現代音楽の原体験に、学生の頃6年過ごしたパリで偶然居合わせた名もなき即興団体の演奏に落涙した、ということがあります。思わず終演後に話しかけ、食事を共にして喜びを分かち合いました。

現代音楽は、作曲家と直接密に話し合い、その音楽の由来を聞き、感じ、伝統に繋がって「いま」私がその延長上で実際に生きているという大きな時空の流れを感じられる喜びがあるからです。クラシック音楽も、当時は現代音楽だった。サブスクで音楽の価値が変わったいま、現代音楽は、今この時にしか楽しめないのです。

 

 

4月2日の公演チケットは下記サイトにて販売中。

 

チケット予約 (イープラス):
https://eplus.jp/sf/detail/3825110001-P0030001

 

各回90名限定(残席も少なくなってきておりますので、今すぐご予約を! )

この貴重な機会をお見逃しなく。成田、梅本、山根によるmumyoの第1回目の公演です。

 

「ゴシック・アンド・ロリータ」東京公演

会場: BUoY
出演: 成田達輝(ヴァイオリニスト) 作曲: 梅本佑利、山根明季子

第1回: 2023年4月2日 (日)
開場 13:30 開演 14:00 
第2回: 2023年4月2日 (日)
開場 16:30 開演 17:00

一般4000円、25歳以下1500円

主催: mumyo llc
助成: 公益財団法人榎本文化財団(令和4年度フレッシュアーティスト助成制度) / 公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京 (令和4年度第4回スタートアップ助成) / 公益財団法人光山文化財団(令和4年度音楽振興助成制度)

ゴシック・アンド・ロリータ(ゴスロリ)は、ヨーロッパの伝統を下地に日本のストリートで再構築された服飾文化、サブカルチャーであり、タナトスを想起させるゴシックと、少女の典型であるロリータが独自に結び付いた表現です。このコンサートでは、ヨーロッパの伝統音楽、ヴァイオリンの独奏曲のフォーマットを用いて、ゴスロリと芸術音楽を接続します。

現代音楽の分野で少女性、日本のポップ、サブカルチャーというテーマに取り組んできた作曲家の山根明季子と梅本佑利の全新作8作品によるプログラム。国内外主要オーケストラと多数共演しているヴァイオリニスト成田達輝のストラディヴァリウスによる演奏でお届けいたします。

各公演ではトークセッションを実施。14時公演ではファッションブランド pays des fées デザイナーの朝藤りむ氏、17時公演では本公演メインビジュアルを担当したイラストレーターのNABEchan氏をゲストに迎えます。

チケット予約 (イープラス):
https://eplus.jp/sf/detail/3825110001-P0030001